大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)5209号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人相沢登喜男の上告趣意(後記)第一点について。

所論は単なる訴訟法違反の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして論旨指摘の点に関する原判決の判断は相当である。

同第二点について。

所論は事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお論旨について考えてみると、原判決の認定するところによれば、被告人等は本件において不正な玉約七百個のほか正当な玉四十三個位を使用したことは論旨指摘のとおりであるが、しかし原判決の判示するとおり(原判決第二点)、被告人等の供述によっても、またその他の証拠によっても共犯者全員が打ち出した景品玉のうち、何個が正当な玉によったものであるか、何個が不正な玉によったものであるかを区別することが全然不可能であるというのであるから、かかる場合においては全部の玉を全体として観察するの外なく、そして不正な玉と正当な玉との比率は不正約七百個に対する正当四三個位というのであるから、かくのごとき比率から見て殆ど全部が不正玉といっても差支えないような場合には、打ち出された景品玉も大部分が不正玉によったものと見るのが相当であり、かかる場合においてはこれと引かえられた景品全部について詐欺罪が成立するものと解すべきである(昭和二六年(あ)第四六一三号同二八年四月二日第一小法廷判決、集七巻四号七五〇頁参照)。従って原判決の判断に違法はなく、理由不備も認められない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例